編集長ハルの気まぐれ日記

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プロレスファンの矜持(後)

プロレスの試合では、相手に怪我させてはいけないという大前提がある。膝蹴りといっても先のとがった方でなく、太腿に近い部分を相手にぶつける。しかしここで手は抜かない。思いっきり太腿をぶつける。手加減して蹴れば、観客にはまったく迫力が伝わらず、ただの三文芝居に終わってしまう。だからプロレスラーは思いっきり蹴られても耐えられるような体作りを毎日怠らない。

相手のわざに耐えて耐えて耐えて、ああ、もうだめだと観客に思わせておき、最後は起死回生の延髄蹴り一発、それでいいではないか。

今のプロレスファンは非常に目が肥えている。手抜きで技を受けたり、かけたりしては、一発で見破られるし「下手糞! 」と野次がとぶ。

客を満足させられるかどうかが一流のプロレスラーである。その意味でアントニオ猪木を越えるプロレスラーはいまだに出てこない。

プロレスはもう何十年も続いている。ハルの意見は「10年続けば本物である」というもの。たとえば、カーレースのF1―。正直言ってハルにはF1の良さがわからない。車がびゅんびゅん走って何がおもしろいのだろうと思う。しかしハルにわからないおもしろさ、世界中の何千万、何億の人を惹きつける魅力があるのだろう。だから何十年も続いているのだ。F1の好きな人に向かって「あんなの一体、どこがおもしろいんですか?」と尋ねるのはあまりにも思いやりがないというもの。それと同じで、プロレスファンに向かっては、たとえあなたがアンチプロレス派であるとしても「それはおもしろそうですね」と相槌を打ってやるのが、正しい向かい方である。

スタントマンやCGを使ったアクション映画を見て「あれは作り物だからおもしろくない」という人は滅多にいない。最後はどうなるかわかっていても、手に汗握りながら映画を見ているではないか。

プロレスラーはそれをライブにし、CGを使わず、スタントマンにも任せず、自身でそのアクションライブを演じてくれるのだ。だから一流のプロレスラーは、その演じ方が見事である。かつてアントニオ猪木はタイガージェットシンと血みどろの抗争を繰り広げた。それがたとえ「つくり」のある試合であっても、私達観客は興奮した。いまそんな試合ができるレスラーはいない。新日本プロレス出身で現在全日本プロレス社長の武藤などはそれができる数少ないレスラーかもしれない。しかし迫力、殺気という点では猪木に遠く及ばない。

いつの間にか猪木讃辞になってしまった。ちなみに我が家にはプロレスのビデオやDVDがたくさんある。いずれも一時帰国した折に買い集めたものである。教育上よくないということで、女房に鑑賞禁止令が出されているけれども、子供がもう少し大きくなり「人を叩いたり蹴ったりしては駄目だ」とある程度分別がつけば、ぜひいっしょに見てみたい。

プロレスを云々いう人は、主に馬場・猪木の頃のプロレスをよく知る人々だ。それ以降、プロレスや格闘技の進歩を知らず、成長が止まった頭の固い人たちである。プロレスの進歩・展開、プロレスラーの努力・苦労を知らずして、先入観と偏見でプロレスを語ってはいけない。「何十年も続いているのだからきっと自分には分からない魅力があるのだ」と認識するのが大人である。

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