インドネシアジャカルタドライバー事情第9回

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ジャカルタドライバー考

第九回

ゆるゆると中年の男性が、首都のとある繁華なモールの地下駐車場に車を運転しながら下りて行った。下の駐車場では、ひとりの妙齢の女性が車を運転しながら、その通路から上へあがろうとしていた。そしてふたりは薄暗い通路の中で突然出合った。あわや正面衝突という情況は、ふたりが同時にブレーキを踏んだので避けることができたが、しかし二人ともそこから動こうとしない。ハイソスのブランドものスタイルに身を包み、あたかもエグゼキュティブという印象を与えているご婦人の方が、先にキレた。堪忍ぶくろの緒を切らしたかの女の車からはクラクションの連射。男性の方は苦笑いをしながらハンドルの後ろにふんぞり返る。『おれのどこが悪いんだ?』

美人のハイソス婦人は、フロントガラスの中で手、頭、目、表情とあらゆるものを動員して相手に非難を浴びせ掛ける。口は呪詛の言葉を吐き散らしているのだろうが、相手の耳には届かない。出会った場所が場所であれば、このお二人はきっと優雅に微笑みながら社交のかぎりをつくすに違いないが、これはまたなんたる出来事!表情からはもったいないことに、美女の面影は消え失せてしまい、やっているのは右手の人差し指を伸ばして斜めに自分の額に近づけ、それを斜めに上げたり下げたり。このジェスチャーはご存知の通り、『おまえの脳みそは傾いている。』を意味するもの。要するに、おまえはイカレポンチ!

それがジャカルタの日々のシーン(それともインドネシア全国の?)。秩序を守らず、他人に譲ろうとせずに力ずく、なにがなんでも相手に勝とうとし、自分が悪いと決して認めない人間たちのいる所。世界中のビルに作られる地下駐車場への入口出口は、どこへ行っても同じパターン。狭く、薄暗く、一方通行で、入口から出ようとすれば入ってくる車との正面衝突は避けられない。その場合、必ずどちらかが百%間違っている。上の例は美人の上流夫人が出口を間違えたのが実態なのだが。

「ええっ?それでもあんなに相手に突っかかって?」
「そう、それがインドネシア人、いやジャカルタ人。上で言ったように、力ずくで、人に譲りたがらず、自分が勝つのが大好きで、自分が間違ったなどと決して認めず、そして公共秩序など念頭にない。」

別の例。車が一台正しい車線を走って来た。左折しようとするが、自分の左前方にいるオートバイのために曲がれない。オートバイは前が詰まっているから、そこに停まっているのだ。左折したい車は自分の左側の家の門の前に、意図しないで停車している。そのときその家からご婦人が門を開けて車で出ようとしたが、目の前に別の車が停まっているので、出るに出られない。このご婦人はまるで辛抱心がなかったようだ。情況を一瞥するやすぐに車から降りて、罵りながら門の前の車を平手でバシバシバシ。『いったいおれが何をしたの!?』とその車の運転者は目をシロクロ。

スカ・ハルジャナさんのお話はそれくらいにして、それでは、交通法規よりも高いポジションでインドネシアの道路交通秩序を統御している原理を分析してみよう。外国人はこれに関していくつかの法則を導き出している。インドネシア人はその見解について、外国人の目から見たものだ、としながらも、否定も反論も加えない。きっとそれに同意共感しているにちがいないが、あえて口に出さないということなのだろう。「流れの法則」「鼻先の法則」「図体の法則」「視認の法則」と名付けられたそれら四つの法則を、これからひとつひとつ解説していこうと思う。どうか次回をご期待あれ。



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ジャカルタドライバー考は西祥郎さん提供です。
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