時間泥棒、ふたたび(前)

開店当初は「いつ潰れるのやら」「やっていけるのか」と第三者だけではなく、経営者の店長ハル自身も訝っていたけど、開店から既に五年以上も経過し、いまではそこそこに認知されるようになって、われながら「よくもったなあ」と感心しているのだ。今回より回想の意味もあり、過去のゴルフショップ繁盛記を加筆修正して改めてJPgolfを紹介したい。

昼間にインドネシア人のお客さんがやってきて

「これ、売りたいんだけど」

もってきたクラブを見ると、これが二十年以上前の名も知れぬマッスルバックアイアンおよび小型ヘッド(当時は普通)のドライバー。

いくらなんでも古過ぎる。それに汚過ぎる。

「無理です。これだけ古いと…」

そのお客さん、食い下がることもなく、もってきたクラブをバッグにしまう。

それから店内にある売り物のドライバーを「これ、いいなあ」としげしげ見つめたあと、帰っていった。

夕刻、その人から電話あり。

「昼間に来たものですが、さっきのドライバーまだありますか。赤いヘッドの○○です」

ああ、あの人か。

「まだありますよ」
「今日は何時までですか」
「今日はもう閉店です」
「来週はもう行けません。今日でないと…」
「わかりました。7時までならお待ちしています。7時までに来れますか?」
「了解しました。行きます」

で、その人は7時前にやってきたのだった。

(次号に続く)


このページは過去アクセスの多かった記事を加筆修正して再掲載しています。